麻酔は出産直前のみ!無痛じゃなかった無痛分娩 -37歳妊婦の出産当日記録その2「本番」

予定日よりも2週間早く始まった出産準備にてんやわんやしている間もなく、緊張と恐怖の無痛分娩の麻酔準備でした。
無限にも感じられた緊張タイムを乗り越えて、これからいよいよ本格的な陣痛にむけて準備されていき、私の緊張も徐々に高ぶっていきました。

束の間の談笑タイム

麻酔の針が無事に腰へ入り、テープで背中や肩へチューブが固定されれば準備完了です。
あとは点滴の針が腕に挿入され、お腹には陣痛や胎動を確認する装置がつけられました。
先生は退室し、看護師さんに入院問診をされている際に「体温と血圧が低すぎる」とのことで、院内のエステコーナーからアロマな足湯セットが出張されてきます。

これがまあ束の間の天国でしたね。
さっきまで緊張しすぎて氷のようにヒンヤリガチガチになっていた足が、膝から下の足湯でほかほかといい気持ちで姫様気分です。
うっすら全身に汗がでるまでしっかり温められました。

前日に便がでてませんと申告すると、うわさに聞く浣腸もありました。
子宮口に風船が入っている器具の先っぽが股からでている状態で、浣腸されて便意を促される…私の股尻付近がいろいろと大混乱です。
ウォシュレットは使ってもいいらしいので安心して使いましたよ。
それにしても器具側からの出血量がすごい。覗いてみるんじゃなかった。
その後おちついたら尿のカテーテル管を入れられたので、あとは産後までトイレへ行くことはなかったです。

10時くらいに促進剤が少量から入り始め、じわじわと陣痛ぽいものが始まりますが、まだ痛いというほどでもない。
陣痛間隔はお腹についた装置により詰所で確認しているので、私は時間を確認しなくてもよいとのこと。
アプリも用意していましたが、結局つかわずじまい。
よく見聞きする「何分間隔でどうのこうの」みたいなやりとりはありませんでした。

室内に時計はありましたが、頭側にあるので私からは見えない位置でした。
私がこの部屋で時間を確認したのは、促進剤を始めたこの時と、この後昼食がでたときと、出産後に時間を告げられた時のみでした。

これから始まる、というかもう始まっている出産作業にむけて緊張するも、「本当にもう産まれるんだな」と「早く会いたい」とが入り混じった複雑な気持ちでいました。
約8ヵ月ほどお腹にいたので、分離してしまうことへの不安というかみたいなものが大きかったのかもしれません。

麻酔を入れるまでの記憶

お昼になり、おにぎりなどの簡単な昼食が出されたときは、たまに「イタタタタ」程度の陣痛だったので合間に食べれたんですが、食後に「そろそろ始めますね」のひとことから様子が変わってきました。
助産師さんが部屋にやってきて、簡単な会話のあと促進剤の機械をピッピピッピと操作するたびに、陣痛の波はどんどん大きく痛くなっていきます。

何度か内診もありましたが、噂によくある「内診が痛い」感覚はわかりませんでした。
というより食後からは、あれよあれよと促進剤が追加されまくり、あっという間に限界量に達し、陣痛の波に飲み込まれパニック状態になり、内診の感覚なんて気にしていられませんでした。

陣痛って「痛い」時間と「痛くない」時間が交互にやってくるのだと思っていたんですが、なんだか「ずっと痛い」んですよ。
痛くない時間がわからなくて体に力が入りすぎ、「力を抜かないと赤ちゃんが降りてこられない」と怒られますが、もう力の抜き方がわからない。
自分のどこに力が入っているのかもわからなくて、ずっと緊張状態で力が抜けずに震えている感覚。

腰に麻酔の針が入っているために、腰をさすったりしてもらうのは禁止だったので、陣痛の痛みがごまかせない逃せないのが最大の苦痛でした。
点滴と麻酔の針につながれてベットに仰向けになる以外の体制が許されないので、「これをすれば楽だったよ」体験談のほとんどが当てはまらない。

痛い、もうずっと痛い。
泣いても叫んでもどうやっても痛い。
痛くても、起き上がることすら許されない。
いつ何分間隔かなんてわかりませんが、もうずっと痛い。つらい。

マザー教室で言われた「呼吸法については、陣痛中は常に助産師が一緒に居ますから、そのときに指導していきますよ」なんて言葉は嘘っぱちでしたよ。
助産師さんはナースコールを押さないと来ないし、押してもなかなか来ないし、来ても内診して「力を抜かないと赤ちゃんが降りてこないよ」と言うだけで、腰もさすってくれない。
そしてまた、ピッピッピと機械を操作して去っていきます。

「どうすれば楽になるの、起き上がりたい」と訴える私に、「深呼吸して我慢しましょう」と言うだけ。
かなり辛くて、もうわけがわからなくなっていて、実際に記憶もあいまいです。

私の人生のなかで、最大値に痛いのは粉瘤事件時だと思っていたんですが、あっさりと記録更新です。

待ってました!ようやく麻酔タイム開始

「麻酔はまだですか」と泣く私に「麻酔は赤ちゃんがもっと降りてきて、子宮口が8センチ開いてからです」としか言わない助産師さんを前に、絶望しまくっていました。
途中で内診されても、子宮口に入れていたバルーンを抜かれても、内診中になんだか大量の出血がチラ見えた時も、もう痛くてつらい以外になかったのが、突然「うわ!なんか出したい!なんか出る?!」に切り替わりました。

助産師さんに告げると内診があり、ようやく待望の「これから麻酔始まりますよ」が来ました。
やっと麻酔が始まる!と、それだけで体の力が抜けたような気がします。
その後、腰につながるチューブから麻酔が入れられると、じわっと冷たい感覚が流れたのがわかりました。
みるみる痛い波が引いていき、身体の力が抜けていきます。

麻酔すごい!
お腹も腰も痛くない。というより、なんだかよくわからない。
数分後には痛みは全くなくなり、体の力がみるみる抜けていきました。

感動と休憩をよそに、困ったことに、陣痛の波も足腰の力までも抜けていきます。
足を叩かれるのですが、触っているのがわかるようなわからないような、痺れと浮腫みを感じる程度です。

陣痛の波は消えていないのですが、私自身が感じられなくなっているので「一気に効きすぎているかもしれないので、少し麻酔を減らしましょう」と言われたのを、断固拒否したのは覚えています。
頑張るから麻酔を切らないでと泣いて懇願しましたよ。

それからは、室内は分娩モードに切り替わり、ベットも足を開いた最終形態に変化。
常に助産師さんが股の間から応援しはじめ、モニターを見ながら「陣痛きたよ、いきんで!気張って!」と合図がくると、私が超がんばる体制です。
自身で太ももを抱えて、お腹や腰というよりもお尻あたりを意識して、赤ちゃんの髪が見えてるよ、頭が挟まっているよと実況されながら頑張りました。

この頃にはもう完全に痛みなんてなくて、それどころか足も股も感覚がなくて、なにか大きなものがお尻のほうにせり出してくるような感覚を意識していました。

分娩時間は4時間半でした

分娩最終形態で、いきみ続けていたのは、90分ほどだったようです。
満身創痍で意識も朦朧としているなか、「頭がでますよ!」という声とともに、大きな産声が上がりました。

いつの間にか入室していた先生が持っているのは、元気よくホヤァホヤァと泣き叫ぶ初対面の赤ちゃん。

素直な気持ちは「本当に人間が入ってたんだな」と感心したことです。とても不思議な感覚。
そして、すぐに胸の上に置いて抱かせてくれたんですが、その顔がこれまで3Dエコーなので覗き見ていた顔とそっくり。
初対面なのに、親近感がすごいです。

出産時間は16時30分で、12時で昼食後に分娩開始してから4時間半での出産でした。
体感的にはもっともっと長い時間だったんですけど、お昼から始めて夕方には出産という字面だけだととても軽い感じで、なんだか腑に落ちない。

その後は、沐浴や身体チェックなどを行い、私も後処理を経て、再び抱かれにやってきた子はすっかり泣き止んで静かになっていました。
2時間ほどそのままベットの上で小脇に抱えている間は、しっかりと目を開けてキョロキョロ、指や足をウズウズしていて、外の世界に落ち着かない様子でした。


なんだかんだでようやく無事出産に至りました。
陣痛中は無限にも思えた時間でしたが、ちゃんと終わりが来ました。
無痛分娩の「無痛」部分は、陣痛中ではなく産まれる直前からの痛みがなくなるといった意味合いでしたね。

次回、その3「事後」に続きます。